この記事はこんな人におすすめ!
- これから社会人になる人
- 所得税についてよくわからない人
- 住民税についてよくわからない人
- 所得税と住民税の計算と支払いタイミングが知りたい人
所得税・住民税の支払いはいつから?

所得税・住民税はいつからどのように払うのでしょうか?
税金の支払いは基本的に給料から天引きとなります。
一般的には
所得税は入社した月から天引きが始まります。
一方住民税は入社した最初の1年は給料から天引きされず、翌年の6月から天引きが始まります。
例えば2020年4月入社の場合所得税は4月分から天引きが始まり、住民税は2021年の6月から天引きが始まります。
住民税は1年目はかからないので忘れがちですが、2年目以降かかりますのでご注意ください。
1年目より2年目の方が手取りが減るなんてこともありえます。
所得税・住民税の計算のもとになる期間は?

給料から自動的に天引きとなるため所得税・住民税がどのように計算されているのかいまいちよくわからない人も多いのではないでしょうか?
所得税と住民税はどちらも1月1日~12月31日の1年間の収入の金額から算出されます。
ただし先ほど説明した通り、天引きの開始時期は異なります。
天引きの開始時期と計算期間をまとめたものが以下の図です。

赤字で記載している期間が計算のもとになる期間です。
例として2021年1月1日から12月31日の収入にかかる所得税と住民税をいつ支払うのか見ていきましょう。
2021年の収入にかかる所得税は2021年1月から12月で天引きされます。
一方2021年の収入にかかる住民税は2022年6月から2023年5月で天引きされます。
しかしここで
と疑問に思う方がいれば鋭いです。
これには源泉徴収という考え方が関係しています。
源泉徴収についてはこの後説明しますが、ひとまずここでは
所得税は先払い
住民税は後払い
ということを理解しておいてください。
源泉徴収とは?

先ほども説明した通り、所得税は前払いとなっています。
この事業者が毎月給料から所得税分を天引きする仕組みを源泉徴収と言います。
本来であれば2021年1月1日から12月31日の1年間にかかる収入は2021年12月31日が終わらないことには確定できません。
毎月の給料が一定額であれば問題ないかもしれませんが、
残業代や賞与額、昇給幅にばらつきがあったり、
途中で病気になって働けなくなったり、
退職するなんてこともありえなくはないわけです。
しかしだからといって、国としても安定した税収確保が必要なので、1年が終わり収入が確定するまで待っているわけにもいきません。
そこで給料を支払う事業者が毎月所得税として給料から天引きする仕組みとして源泉徴収があるわけです。
源泉徴収は
安定した税収確保、払い忘れの防止、一人一人個別に対応する必要がなくなるという点で国としては非常にメリットがあります。
もちろん働き手としても確定申告を行う必要がなくなるという点でメリットがあります。
所得税はいくら払うの?

では所得税の金額はどのように決まるのでしょうか?
収入が会社の給料のみの場合で説明していきます。
源泉徴収の金額
給料から毎月天引きされる所得税の金額は国税庁の定めている「給与所得の源泉徴収税額表」によって決められています。

こちらは2020年(令和2年)分となっております。
見ていただければわかる通り社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養親族の数によって源泉徴収の金額は変わってきます。
甲と乙については少しややこしいのですが、一般的には甲の方を見ていただけば問題ありません。(「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していれば甲欄になり、一般的には提出することになります。)

入社したばかりの頃はこの辺りの金額におさまるのではないでしょうか。おさまらない方は国税庁のホームページをご覧ください。
例えば社会保険料等控除後の給与等の金額が18万円で扶養親族がいない場合の源泉徴収税額は4,050円となります。
ただし源泉徴収の額はあくまで1年間の収入で計算される所得税の前払いであり、概算でしかありません。
そこで12月の給料が確定した時点で正しい税額が計算され、源泉徴収した分との過不足が計算されます。これを年末調整と言います。
源泉徴収の額は少し多めに設定されているため一般的には12月の年末調整によって払いすぎた分が還付されます。
そのため12月の給料が少し多くなりますが驚かないでください。
所得税の計算
少しややこしいので
Aさんを例に説明いたします。
給与所得控除
当たり前ですが所得税の計算において重要なのは収入の金額です。
月給20万円ということは年間240万円となります。
しかしこの240万円全てが所得税の計算に使われるわけではなく、一部は計算から除かれます。
これを給与所得控除と言います。
以下のように金額は定められています。(令和2年分~)
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円(55万円に満たない場合は55万円) |
180万円超~360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超~660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超~850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
※収入金額が660万円未満の場合は所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)により詳細に給与所得控除額が定められていますのでこちらはあくまで目安です。
つまり年収240万円の場合の給与所得控除額は
240万円×30%+8万円=80万円
となります。
社会保険料控除
さらにこれだけではなく支払った社会保険料の分も控除されます。
社会保険料がいくらか確認しましょう。
厚生年金保険料の自己負担額は9.15%なので月給20万円の場合月18,300円です。
健康保険は会社や地域によって異なるため今回は自己負担額を5%だと仮定します。月給20万円の場合は月10,000円です。
※雇用保険料は金額としてはそう大きくはないので今回は省略します。
つまり一月当たりの社会保険料は28,300円となり、年間では339,600円となります。
※今回の例では34万円として計算します。
基礎控除
さらに全員一律に控除される金額として基礎控除というものがあります。
これは令和2年分からは48万円です。
給料をもらって働く人は全員、給与所得控除と基礎控除が受けられます。
給与所得控除が最低でも55万円。基礎控除が48万円。
つまり合計103万円までは稼いだ金額のすべてが控除されるため所得税がかかりません。
これが俗にいう103万円の壁です。
所得税の計算結果
課税される所得金額=年収ー給与所得控除ー社会保険料控除ー基礎控除
この計算が重要であり、今回の例では以下のようになります。
課税される所得金額=240万円ー80万円ー34万円ー48万円=78万円
この金額を所得税の速算表に当てはめて計算します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
今回の78万円という金額は195万円以下なので税率5%をかけて計算します。
78万円×5%=39,000円
ちなみに課税される所得金額が500万円の場合の計算は
500万円×20%-427,500円=572,500円 となります。
※最後に2037年までは復興特別所得税として2.1%をかけた金額が別途かかります。
復興特別所得税=39,000円×2.1%=819円
つまり今回の例では所得税が39,819円となります!
ちなみに年末調整での還付額は?
社会保険料等控除後の給与等の金額は
200,000円ー18,300円ー10,000円=171,700円
となります。
これを先ほどの表に当てはめて源泉徴収額を確認すると3,770円だとわかります。
つまり11月までに支払った金額は3,770円×11月=41,470円となります。
しかし先ほどの計算で所得税は39,819円でしたのでこの差額
41,470円ー39,819円=1,651円
が12月の給料を受け取る際に還付となるわけです。
住民税はいくら払うの?

続いては住民税についてみていきましょう。
※住民税とは一口に言っても実は2種類あり、「都道府県民税」と「市町村民税」に分かれていますが、ここではざっくり理解していただくため区別しないこととします。
住民税の税額を計算するには均等割と所得割という部分に分かれています。
この合算額が住民税額となります。

均等割は皆一律にかかるもので約5,000円です。
所得割は所得に応じてかかるもので所得税の計算と基本的には同様に課税される所得金額(課税標準額)を計算し、その10%です。
では所得割の計算をみていきましょう。
所得税の時と同様、Aさんを例に説明いたします。
課税される所得金額=年収ー給与所得控除ー社会保険料控除ー基礎控除
この計算の仕方も所得税の時と同じです。
ただし基礎控除の額が少し異なり、所得税では48万円でしたが、住民税の計算では43万円の控除となります。
つまり
課税される所得金額=240万円ー80万円ー34万円ー43万円=83万円
この10%が所得割の金額なので、
所得割の金額は83,000円となります。
※本来は調整控除というものなどもありますが金額としては大きくないのでここでは省略します。
よって住民税は
住民税=均等割+所得割なので
住民税=5,000円+83,000円=88,000円 となります。
つまり今回の例では一月当たり88,000円÷12≒7,333円です。
ふるさと納税は住民税を抑えられるお得な制度!
思いのほか住民税が高いと感じた方は多いのではないでしょうか。
この住民税を前払いで払いつつ、返礼品がもらえてしまうお得な制度がふるさと納税です。
注意していただきたいのはあくまでも住民税が安くなるわけではなく、前払いしているようなものだということです。
ただし何もしなくても結局住民税は支払わなければなりません。
であれば、ふるさと納税を利用した方がメリットは大きいです。
詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ
- 所得税は入社時から、住民税は翌年の6月から支払いが始まる
- 所得税・住民税の計算の基礎となるのは1月1日~12月31日の収入額
- 所得税は前払い、住民税は後払い
- 収入額から各種控除後の金額に税率をかけて計算される
- 住民税は均等割と所得割の合算額
- ふるさと納税を上手に活用しよう
今回はあくまで概要を理解していただくためにざっくりと説明させていただきました。
大抵の社会人は毎月給料から自動的に引かれているためその金額がどのように計算されているのか、そもそもいくら引かれているのかすらよくわかっていない人も多いです。
そこでこの記事でまずは考え方の基礎だけは押さえておいていただければと思います。
基礎がわからないということは税金を安く抑える方法もわからないわけで、いついくら支払わないといけないのかもわからないわけです。
金額も決して安くはないのでぜひ今後所得税・住民税に関心をもっていただき、せっかくなので1年の終わりにご自身でも税額を計算してみてはいかがでしょうか。
今回の例以外にも扶養親族がいる場合の控除や、生命保険料控除、iDeCo利用者にかかる控除などがあり、各個人の状況に応じて税額は変わってきます。
調べてみると他にも意外なところに控除されるものがあったりするので利用できるものは上手く利用していきましょう!