お金の教養

新入社員必見!社会保険料の計算と天引きされるタイミング【まとめ】

うしくん
うしくん
4月から6月はあまり働かない方がいいとか聞いたことあるんだけどそれって何のことなの?
てらこー
てらこー
それは社会保険料のことだね!
てらこー
てらこー
社会保険料とひとまとめにして呼ばれることが多いけど実は何種類にも分かれているんだよ。
うしくん
うしくん
複雑そう..
てらこー
てらこー
確かに少し複雑だけど、保険料も決して安くないから最低限は理解しておこう!

 

この記事はこんな人におすすめ

  • 社会保険って何?って人
  • 社会保険の分類がわからない人
  • 社会保険料の金額がどのように決まっているのかわからない人
  • 社会保険の役割がよくわからない人

 

社会保険って何?

この記事では会社で働く人の社会保険に絞って説明します。

※本来は自営業の方や扶養に入っている方も一部社会保険に加入します。

 

社会保険とは私たちの最低限の生活を支えるために導入されている制度であり、加入資格を満たす全ての方が加入しなければならない保険です。(加入義務)

あまり実感がない方も多いかもしれませんが、病院にかかる時の医療費、障害を負った時や失業した時の収入保障など、もしもの時に備えた保険が充実しています。

 

そして一口に社会保険と言っても実は5つの保険で成り立っています。

  1. 年金保険(会社員は厚生年金)
  2. 健康保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険

狭義では年金保険と健康保険のことを社会保険と呼ぶことも多いですが、本来はこの5つをまとめて社会保険と言います。

 

それぞれ加入要件はありますが、一般的な会社員は上記の5つとも保険料を払わなければなりません。金額としては決して安くないので保険料がどのように決まっているのかざっくりと理解しておきましょう。

 

 

厚生年金と健康保険の保険料計算

保険料額表 出典:全国健康保険協会(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r2/ippan/r2030113tokyo.pdf)

 

厚生年金健康保険の保険料の計算はほとんど同じなので合わせて説明します。

 

所得税の場合は概算により毎月源泉徴収され、1年の終わりに年末調整という形で過不足があれば調整が行われます。

【新入社員必見】所得税と住民税の計算方法と天引きされるタイミング給料から所得税・住民税が引かれるらしいけどいつから?どれくらい?引かれるのかそもそもよくわかっていない方は多いのではないでしょうか。節税しようにも税金の金額がどのように決まっているのか知らなくては何の対策もしようがありません。最低限の知識をつけておきましょう!...

 

一方社会保険ではそういった調整はなく、一人一人の標準報酬月額というものによって毎月の保険料が計算されます。

厚生年金保険料は標準報酬月額の18.3%。(会社が半分負担するため個人の負担は9.15%

健康保険料は地域や会社により多少変動がありますが約10%。(会社が半分負担するため個人の負担は約5%

 

 

標準報酬月額とは

標準報酬月額によって保険料が決まってくるためここでは標準報酬月額がどのように決められているのかを説明していきます。

標準報酬月額とは会社から受け取る基本給だけでなく、残業代や通勤手当など全てを含んだ総支給額で決まります。

例えば総支給額が234,500円だった場合をみていきましょう。

まず上の表の報酬月額のどこの範囲に含まれるかを確認します。すると230,000~250,000に含まれることが分かります。

そのまま左側を見ていただき標準報酬月額が240,000円となります。

つまり231,000円でも249,000円でも一律240,000円と決定されるというわけです。

 

ただしこれは毎月計算されるものではなく、特定のタイミングでのみ変更となり、その時まではずっと同じ標準報酬月額が適用となります。

例えば先ほどの例の総支給額234,500円(標準報酬月額240,000円)の人が今月たまたま残業が多くて279,000円だったとします。

279,000円という金額だけ見れば270,000円~290,000円の間に入るため標準報酬月額は280,000円で保険料が計算されるのかなと思いがちですが、変更になる条件がそろっていない限りはそのまま標準報酬月額240,000円で保険料が決まります。

 

では標準報酬月額が変更になるのはどういう時なのでしょうか。

まず入社時はすでに働いている方の総支給額などから概算で標準報酬月額が決められますが、その後は以下の場合に変更となります。

標準報酬月額が変更になる条件
  1. 4~6月の総支給額の平均が現在の標準報酬月額と異なる時
  2. 固定的賃金に変動があり、連続した3か月の総支給額の平均に2等級以上変動がある時

詳しく説明していきます。

 

①4~6月の総支給額の平均

少なくとも1年に1度はその人にあった標準報酬月額に設定しましょうという意図で算定基礎届を提出することが会社側には定められています。

つまり社会保険に加入している全従業員の総支給額の報告が義務付けられているわけですが、ここで要求されるのが4~6月分です。

毎月全従業員の総支給額を報告し、保険料を決めていると相当な手間と負担と時間がかかってしまいます。

また、1か月分だけを基準にしてしまうとたまたまその月だけ金額が大きいなんてこともありえるため4~6月分に絞って保険料計算をしやすくしているわけです。

 

そのためよく手取りを増やすために4~6月は残業を減らそう。なんて話が出てくるわけです。制度の穴をついており理にかなっていると言えるでしょう。

ただし注意していただきたいのはあくまで4~6月に支払われる金額なので、残業代が翌月払いであれば残業を抑えるべきなのは3~5月になることです。

 

少しややこしいのですがこの計算により実際に標準報酬月額が変更になるのは9月分からとタイムラグがあることだけ覚えておいてください。

保険料の支払いは翌月末が期限なので大抵の企業が4月分の保険料を5月に支払われる給料から天引きします。つまり9月分からの変更となると実際は10月から天引きされる金額が変わることになります。

 

計算例

 

 

 

②固定的賃金が変動後の総支給額の平均

4~6月の総支給額によって標準報酬月額が変更になることはご理解いただけたかと思いますが、それ以外にも変更になる可能性があるものとして固定的賃金の変動があります。

例えば4~6月だけで標準報酬月額が決まるのであれば7月から昇給して翌年3月に降給させるなんて方法を取れば標準報酬月額を安く抑え続けることも可能になってしまいます。これでは実態が全く反映できていないことになってしまいますよね。

つまり基本給や交通費といった基本的に毎月変動がない支給額(固定的賃金)に変動が生じた際にはその変動時から3か月分の総支給額の平均で標準報酬月額が決まります。

※残業代は毎月ばらつきがあるため固定的賃金ではありません。ただし残業代の計算方法が変わり単価が上がった場合などは対象となります。

 

ただしこれは2等級以上の変動がある場合のみ適用されます。

例えばもともとの標準報酬月額が260,000円の人は昇給後290,000円以上にならない場合は2等級以上の変動にはならないためそのまま260,000円で保険料が計算されます。

 

そしてこの計算で標準報酬月額が変更になるのは固定的賃金の変動から4か月目の分からです。(7月分から給料が上がった場合は7~9月分の総支給額で新しい標準報酬月額が決まり、10月分から変更となります。)

 

 

繰り返しになりますがこのようにして決定した標準報酬月額により保険料が計算されます。

厚生年金保険料は標準報酬月額の18.3%。(会社が半分負担するため個人の負担は9.15%

健康保険料は地域や会社により多少変動がありますが約10%。(会社が半分負担するため個人の負担は約5%

 

 

介護保険の保険料計算

厚生年金・健康保険と分けはしましたが、実は介護保険も保険料計算の仕方、天引きされるタイミングは同じです。

令和2年度の介護保険料は標準報酬月額の1.79%となっています。(会社が半分負担するため個人の負担は0.895%

ただし厚生年金や健康保険と異なり、介護保険は40歳から保険料負担が発生することになります。

 

 

雇用保険と労災保険の保険料計算

雇用保険と労災保険は合わせて労働保険とも言われます。

自営業などで一人で働いている分には基本的に加入することはありませんが、従業員を雇用し働いてもらう場合には加入が必要になります。

万が一失業した場合に収入を保証してくれる失業保険はこの雇用保険からの給付です。

 

雇用保険と労災保険は標準報酬月額ではなくあくまで毎月の総支給額から計算され、毎月天引きされます。

 

雇用保険

まず雇用保険料の計算から説明していきます。

事業内容により保険料計算は少し変わってきますが一般的な職種であれば基本的に雇用保険料は総支給額の0.9%となっています。(会社が0.6%を負担するため個人の負担は0.3%

例として総支給額が234,200円の場合を考えてみますと

234,200円×0.3%=702.6円

この場合50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げとなるため、保険料の個人負担分は703円となります。

 

労災保険料

続いて労災保険料はと言いますと、実はこれは会社側が全額負担するものなので私たち従業員は特に保険料を払う必要はありません。

ですから、実は会社側でこれくらい負担してくれているんだなということだけ知っておいていただければ十分です。

 

職種に応じて働いている最中の危険のリスク(労災のリスク)が異なるため保険料率にはばらつきがあります。(0.25%から8.8%)

ちなみに一般的な事務職であれば労災保険料は総支給額の0.3%となります。(会社側が全額負担

 

 

まとめ

 

  • 厚生年金・健康保険・介護保険の保険料は標準報酬月額をもとに計算される
  • 標準報酬月額は毎月計算されるのではなく特定の条件でのみ変更となる
  • 3~5月の残業を減らすと厚生年金・健康保険・介護保険の保険料が抑えられる
  • 厚生年金・健康保険・介護保険の保険料は翌月末が納付期限のため、大抵翌月に天引きされる
  • 雇用保険・労災保険は毎月の総支給額をもとに計算され、その月に天引きされる

 

社会保険の一般的な負担割合

厚生年金保険:9.15%(会社も9.15%)

健康保険:約5%(会社も約5%)

介護保険:0.895%(会社も0.895%)

雇用保険:0.3%(会社が0.6%)

労災保険:0%(会社のみ0.3%)

合計すると約15.345%ほどの個人負担。(所得税・住民税は別途かかります)

 

所得税・住民税の計算と天引きのタイミングについてはこちら。

【新入社員必見】所得税と住民税の計算方法と天引きされるタイミング給料から所得税・住民税が引かれるらしいけどいつから?どれくらい?引かれるのかそもそもよくわかっていない方は多いのではないでしょうか。節税しようにも税金の金額がどのように決まっているのか知らなくては何の対策もしようがありません。最低限の知識をつけておきましょう!...