この記事を読むとわかること
- そもそも年金とは何か
- どういうときに遺族年金をうけとれるのか
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金
- 国民年金の独自給付
- 遺族年金の受け取り3パターン
- 受け取れる年金額の計算
そもそも年金とは?
日本国内に住む20歳から60歳までの人は国民年金への加入が義務となっています。
加入するかしないか選べるものではありません。
また、社会保険に加入している会社で働く人は20歳未満から70歳までは厚生年金の加入が義務となっています。
厚生年金に加入し保険料を支払っている人は、国民年金の保険料も支払っている扱いとなります。

遺族年金とは?
年金は「もしもの時に収入がなくなってしまうのを防ぐこと」を目的とした保険であり、
(1)年を取って働けなくなった時
(2)障害を負って働けなくなった時
(3)一家の大黒柱が亡くなった時
に年金を受け取ることができる仕組みとなっています。
もちろん保険なのでちゃんと保険料を支払っていないと受け取ることができません。


この記事で取り上げるのは
(3)一家の大黒柱が亡くなった時に受け取れる年金。その名も遺族年金です。
一般的には
国民年金に加入していた人が受け取れる年金は遺族基礎年金と呼び
厚生年金に加入していた人が受け取れる年金は遺族厚生年金と呼びます。
遺族年金をもらえるのはどういうとき?
一家の大黒柱が亡くなった時に遺族年金がもらえることはここまでの説明で理解していただけたと思います。
ではどういう時にもらえるのでしょうか。
亡くなった方に生計維持されていた配偶者や子などがおり、以下の保険料の納付要件を満たしている場合受け取ることができます。

注意していただきたいのは死亡日の前日時点での保険料の納付状況で権利が決まるということです。
これは当たり前ですが、死亡日以降の納付状況となると後からまとめて保険料を支払うこともできてしまうからですね。
ちゃんと払っていれば問題ありません。
そして受け取れる年金の種類と金額は
- 死亡日時点でどの年金制度に加入していたか。
- 子の有無や婚姻期間、年齢
によって決まってきます。

国民年金の保険料と遺族基礎年金の関係
ではいくらくらいもらえるのでしょうか。保険料との関係を見ていきましょう。
国民年金の保険料は月額16,410円です。(令和元年度)
国民年金加入中に死亡した場合、「子のある配偶者」または「子」が遺族基礎年金を受け取れます。
※ちなみに年金制度での子とは以下の者を表します。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- 20歳未満で障害等級1級または2級の障がい者
そして受け取れる金額は以下の通りです。
(令和元年度)
子のある配偶者が受け取るとき:年額780,100円+(子の加算)
子が受け取るとき:年額780,100円+(2人目以降の子の加算)
※子の加算は第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円。
障害年金同様20歳で死亡しても40歳で死亡しても金額は一律です。
例として、ご主人が亡くなり、妻と子が1人いる場合は
780,100円+224,500円=1,004,600円(年額)
となります。
子がいない場合でも独自給付があります
①寡婦年金
国民年金第一号被保険者の保険料納付済み期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある夫が死亡した時に、夫によって生計を維持され、かつ、夫との婚姻関係が10年以上継続している妻が60歳から65歳まで受け取ることができます。
※金額は夫が受けられたであろう老齢基礎年金額(第一号被保険者期間に限る)の4分の3。
②死亡一時金
国民年金第一号被保険者の保険料納付済み期間が36月以上ある方が死亡した時に遺族が受け取ることができます。
(保険料納付月数) | (金額) |
36月以上180月未満 | 120,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
すこし難しいのでこんな給付もあるんだーとざっくり理解していただければ十分です。
知らなければスルーしてしまうかもしれませんが、知っていればもしもの時に年金事務所や市区町村の窓口で相談することができます。
厚生年金の保険料と遺族厚生年金の関係
では続いては厚生年金の保険料と遺族厚生年金の関係を見ていきましょう。
厚生年金の保険料は月給によって決まるため、平均月給30万円で働いており、30歳でご主人が亡くなってしまった妻(30歳)と子が1人をモデルとして考えてみましょう。
・30歳で亡くなった。
・妻も30歳で子が1人。
この場合厚生年金の保険料は30万円×18.3%=月額54,900円となります。ただし、厚生年金加入者はこの半額を会社側が負担してくれるため実際にモデルAが支払う保険料は月額27,450円となります。
厚生年金加入中に死亡した場合は遺族厚生年金を受け取ることができます。さらに、「子のある配偶者」または「子」の場合には障害基礎年金分も受け取ることができます。

遺族の構成や年齢によって受け取れる金額は異なり、大まかに3パターンに分けられます。
遺族厚生年金の金額はざっくり以下の式で計算できます。
Ⓐ:平均月給×(5.481/1000)×加入月数×(3/4)
(ただし加入月数が300月に満たない場合は300月で計算します。)
加入後間もない方でも300月分は最低限確保しますよという仕組みになっているわけです。
(令和元年度)
「子のある配偶者」または「子」:Ⓐ+遺族基礎年金
「子のない妻」:Ⓐ+中高齢の寡婦加算額
「子のない55歳以上の夫」「55歳以上の父母」「孫」「55歳以上の祖父母」:Ⓐ
※「夫」「父母」「祖父母」は死亡当時55歳以上であることが条件であり、受給開始は60歳からです。ただし「夫」は遺族基礎年金受給中は60歳より前でも合わせて受け取ることができます。
※30歳未満の「子のない妻」は5年間の有期給付となります。
中高齢の寡婦加算額とは
①夫が死亡した当時妻が40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない場合。
②40歳前から「子がいる妻」として遺族基礎年金を受け取っており、40歳を超えてから子が対象に該当しなくなり遺族基礎年金を受け取ることができなくなった場合。
40歳から65歳まで585,100円が加算されます。
・30歳で亡くなった。
・妻も30歳で子が1人。
今回の例で受け取れる金額は
30万円×(5.481/1000)×300月×(3/4)+ 780,100円+224,500円≒1,374,000円(年額)
となります。
まとめ
年金は高齢者がもらうものであり、若いうちは関係ないと思っていた方がほとんどではないでしょうか。私も大学卒業まで知りませんでした。
しかし実際年金は保険の役割を担っており、今回の記事の通り遺族年金という制度もあります。これは若い世代も無関係ではありません。
むしろ遺族年金の存在を知らなかったために、民間の保険会社に搾取されている可能性すらあります。(私がそうでした。)
たしかにもしもの時に遺族年金だけでは十分な金額とは言えないでしょう。
しかしこれを知っているか知らないかでは民間の保険に対する考え方や安心感は大きく異なってきます。
知らなかった方は今一度保険を見直してみてはいかがでしょうか。
